まだ5月半ばだというのに全国各地で30℃越えの真夏日を記録したこの日、我々が向かった先は信越本線の群馬県側の終点横川駅。そこから始まる今回のライドは浅間山を中心に反時計周りに大きなループを描くもの。軽井沢を起点とする人気イベント「グランフォンド軽井沢」の拡大版といったところか。
横川をスタートして国道18号の「碓氷旧道」と呼ばれる区間へ。碓氷旧道で最も心に焼きつく光景といえば、めがね橋の愛称で親しまれる「碓氷第三橋梁」。かつて横川-軽井沢間を結んだアプト式鉄道の遺構だ。風化した煉瓦から移りゆく時の流れを感じずにはいられない。碓氷旧道のプロフィールは平均勾配4~5%の全般的に緩やかな登り。184ものカーブで構成されていると聞くと気が重いが、実際に走ってみると減速を強いられる感覚はほとんどなく、剛脚ライダーならフロントギアをアウター縛りでクリアしてしまうだろう。
184番目の最終カーブを過ぎればそこはもう長野県軽井沢町。しかし、これではまだ碓氷峠を越えたことにはならない。本来のというか、旧中山道の碓氷峠はここから北へ向かって直線3kmほど、標高もさらに高いところに位置する。いったん国道を離れ、左手に浅間山を眺めながら町道三度山線を登っていくことに。県道133号と合流したところがほぼピーク。峠の茶屋が軒を連ねる袋小路に入っていくと、群馬県と長野県にまたがる「熊野皇大神社」が出迎えてくれる。熊野皇大神社から歩いて数分、見晴台からの眺望はどちらを向いても山・山・山。まさに上信国境のど真ん中といった趣だ。いにしえの旅人にとって碓氷峠が難所中の難所だったというのも頷ける。
中~終盤の見どころが、浅間山の北麓に広がる嬬恋高原。見渡す限りのキャベツ畑は嬬恋村のシンボリックな光景だ。浅間山の火山活動が作り上げた大地の上、どこまでも続いていく農道の開放感と言ったら。浅間山、四阿山、草津白根山など、周囲に2000m級の山々を臨む雄大な景色はこの日一番のご褒美となった。
そして迎える最後の砦が、湯の丸高原の地蔵峠。地蔵峠を登っていくと、道路脇に祀られている石造りの観音像が目につく。それも一体や二体ではなく、数百メートルおきに次々と。東御市の新張から嬬恋村の鹿沢温泉まで湯治に向かう人々の道しるべとして、江戸から明治にかけて1町(約110m)おきに百体(現存するのは70体ほど)が建てられたそうだ。やっとの思いで標高1732mのチマコッピ(最高地点)に到達。東御市側の集落までへ降りてくればもう一踏ん張り。
日が傾きかけた頃、浅間山に別れを告げました。
SUMMARY
- Rider:
- HITACHI NORITAKA
- Date:
- 2023.05.17
- Distance:
- 140km
- Elevation:
- 3000m
- Road Surface:
- TARMAC