ヒストリー

服が先か。自転車が先か。

現在、世界中にたくさんのサイクルウェアブランドがありますが、アパレルに携わる創業者やデザイナーの自転車好きが高じて、サイクルウェアを作り始めたという話を結構耳にします。
その点ASSOSは異なり、創業者のトニー・マイヤーは、祖父の代から続くスポーツサイクルショップの3代目。「アパレルありき」ではなく、まずは「自転車ありき」。
「スポークで予防接種を受けた。」というのが口癖なほど、根っからのサイクリストです。プロの選手を目指していたのですが、トレーニング中の事故で怪我を負い、選手の夢は断念したという経験の持ち主。その後はスポーツサイクルのビジネスに携わりながら、若手選手育成の為のチーム運営を手がけてきました。

理系出身のエンジニアであり、自転車界のダ・ヴィンチと称されるトニーは、現在のロードバイクの世界では当たり前となっている製品を次々に生み出しました。

1976年 シールド式カセットベアリング採用のBB。
1977年 ニードルベアリング採用のペダル。
1980年 V字形断面のエアロリム。

その最たるものが1976年に生み出した、世界初の涙滴形チューブを使用した、トラック競技用のフルカーボンフレーム。チューリッヒ工科大学との共同プロジェクトでした。

当時カーボンという素材は、宇宙及び軍需目的としか使用されていない特殊な素材で、ロードバイクの素材はほとんどがスチール。彼は、スイスからわざわざアメリカのNASAに赴いて、その素材を購入し、持ち帰ったという経緯があります。
アメリカとソ連の東西冷戦下にあった当時、「ソ連を始めとする東側には、決してこの素材を渡さない」という誓約書にサインさせられたという曰く付きだから面白い。

ライクラ製サイクルショーツの誕生

そのフルカーボンバイクを使用する、自国スイスの選手が風洞実験を繰り返す中で、トニーは気付きます。バイクフレームよりも、選手が着用している当時のウール製のジャージとショーツが、ものすごい空気抵抗を生み出していることに。
当時のウールのジャージは汗を吸うと重たく、伸びてしまい、雨が降ると、漕いでいる自らの脚が、垂れたジャージで見えないほどだったといいます。ご想像の通り、肌触りもかなり悪いものだったようです。

そんな中、トニー氏の発案で、当時の最先端スポーツであるスキーのダウンヒルスーツをライダーに着せてみたところ、予想通り、空気抵抗が大幅に改善される結果に。
スキーのダウンヒルスーツは、最先端のスポーツ用素材、デュポン社の「ライクラ」を使用していました。トニー氏はここに着目。縫製工場で働いていた奥さんに、ライクラ製のサイクルショーツを作ってもらい、それを販売したのが、サイクルウェアブランドとしてのASSOSのスタートです。

当時ヨーロッパのアマチュアレース界では、ASSOSのライクラショーツ発売されると、1ヶ月でプロトンの半分が、それまでのウール製からASSOSのライクラショーツに切り替わったという逸話があります。

いずれにせよ、自転車を速く、快適に漕ぐ為にウェアに着目し、それを作り始めた。そこがASSOSの原点。ファッションではないところが、なんともASSOSらしい。

サイクルパッドのロールス・ロイス

もう一つ、ASSOSが生み出した現在のサイクルウェアの当たり前と言えば、2001年に開発されたエラスティック インターフェイス。現在では当たり前の、伸縮する化繊素材のパッドです。

これはASSOSが行った第2のサイクルウェアの革命でした。それまでは、伸縮性やクッション性に乏しいセーム革や人工皮革がパッドとして使われていました。この快適性の塊のようなエラスティック パッドの登場に、お尻の痛みに悩まされていた世界中のサイクリスト達が救われたのです。

これはプロの選手達も同様で、契約外のASSOSのパッドを、こっそり所属チームのショーツに張り替えたり、ASSOSのショーツのロゴをマジックで消して使用したりする選手が続出したそうです。ちなみにこのような事例は、現在も続いているそうで、あのASSOSのイメージのまったく無い有名選手が、実はASSOSのパッドでないとサドルに跨がれない、というような話をしばしば耳にします。

優れた快適性から「サイクルパッドのロールス・ロイス」とも称されるASSOSのサイクルショーツは、現在も尚、進化を続けています。
新しい世代の製品になるほど、伸縮性やクッション性はもちろん、通気性やフィット感が大きく向上。「何も身に付けていないような感覚こそ究極の理想」とし、それを目指し、素材探しから構造設計、パターニングから製造まで、徹底して行っているのがASSOSの物作りです。

Made in Cycling

現在ASSOSが本社を置く、スイス南部のティチーノ州は、ミラノから車で1時間程の所にあり、イタリアンファッションの製造を担うエリア。最先端で高品質なテキスタイルが生み出され、高い縫製技術を持った工場が多数存在する地域です。

また、スイスながら温暖な気候で、アルプスの山々に囲まれた風光明媚なこの地は、イタリア北部に住むサイクリスト達が毎週末のように訪れるサイクリング パラダイス。その最高の環境から、ヨーロッパのトッププロ選手たちも多数住んでいます。そのような身近にいるプロ・アマの選手達からのフィードバックを受けながら、ASSOSのサイクルウェアは日々進化しているのです。

サイクリストによるサイクリストの為のウェア。ASSOSがこの地に在るのは、単なる偶然ではなく、必然だったのかもしれません。