みなさん、こんにちは!アソス プロショップ トーキョーのアイハラです。
既にご覧いただいた方には改めてご案内となってしまい恐縮ですが、先日、ASSOS代理店 ダイアテック(株)さんのサイト内に文章を寄稿させていただきました。

『アソスのビブショーツと私。』という、かなりバクッとしたお題を担当の方からいただきまして…
果たして何を書いたら良いものか?と思いながらも、最近考えていたことを、口幅ったいようで恥ずかしいのですが、寄せさせていただきました。

せっかくなので、自分のとこのブログ内でもご紹介させていただければと思います。
こちらに載せ替えるのに際し、少し写真などをアレンジしてみました。
以下、本文となります。

 


 


「不易流行」

ASSOS
のビブショーツを思う時、そんな言葉が頭に浮かぶ。



「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。また、新味を求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であること。」
蕉風俳諧における理念の一つ。三省堂 新明解四字熟語辞典

今やASSOSのビブショーツはサイクリングにおけるスタンダードとなっているが、スタンダードであり続ける裏には、絶え間く積み重ねられてきたイノベーションの数々がある。

1976
年に、それまでのウールに代わる世界初のライクラ素材を使用したサイクリングショーツを発表して以来、ASSOSはサイクリングショーツのスタンダードを次々と塗り替えてきた。
スキーウェアに着想を得た"ビブ"サスペンダーの採用。セーム革からエラスティック素材のパッドへの変更。レッググリッパーの搭載。通気性に優れたワッフル構造のパッド。パッドの全周を縫い付けない大胆な発想。シームを極力減らしたパターンの追求。新機軸のサスペンダー構造。等々。全てはサイクリストの快適性の為に。

私アイハラが2007年に初めて買ったアソスのビブショーツがこちら。S2世代のFI.13という上位グレード。このショーツを初めて身に付けた時の衝撃は今でも忘れません。この当時、色物のビブショーツが大流行。今見ると結構なインパクトですが、アソスも黒、白に加えて赤、青、黄、チタンなど多数のカラーがラインナップにありました。ちなみにこの個体は後に当店スタッフの常陸に受け継がれ、同じショーツを履くというサイクリング界の「義兄弟の契り」を結ぶことになります。


40
代半ばに差し掛かった今の自分にとって、買い物の際の基準は、それが「確かな物」かどうかだ。これまでにたくさんの買い物をしてきてわかったのは、自分の場合、物の数はそれほど必要ないし、奇抜で特別な物も必要ない。
重要なのは、使い心地や着心地がよく、なにより使っている時に気分が良い物。そんな物を使いたい。その結果、気がつくと身の回りには、いわゆる定番的な物ばかりが残った。
そこそこの値段はするが、品質が高く、機能的。シンプルで飽きが来ず長く使える。そしてプロダクトとして美しい。そこが共通点。

スイスのサイクリングウェアASSOSの製品、とりわけブランドの代名詞的なアイテムであるビブショーツは、まさにそのような物だ。サイクリングウェアのスタンダード。それがASSOSのビブショーツ。スイスという国のイメージをそのまま体現したような、緻密で美しく、高機能な製品になっている。

2007年からASSOSのビブショーツを使い始め、現在まで S2S5S7S94世代の変遷を目撃してきた者として、ひとつ言えるのは、やはり「最新の物が最良の物である。」ということ。その時々で、サイクリストの快適さの為に出来ることを全て盛り込んでいるのだから、必然的にそうなる。

2008年ローンチのS5ジェネレーションのビブショーツ。カラーはブラックとホワイトの2色展開となり、ここの世代変更で野暮ったさが減り、グッとモダンなプロダクトになった気がします。写真の最上位グレード FI.13 S5は、現在でも愛用者のいる歴史的名品!お尻の部分がエンボス調素材に切り替わっており、サドルの上で滑りにくくなっていました。私アイハラもこのショーツが大好きでした。

 

当時、エルゴノミック(人間工学的)な立体パターンを追求すると、パネルを細かく分割し、それを縫い合わせる方法がとられていました。当時はその履き心地に関心したものでしたが、今考えてみると、パネルが多いということはシーム(縫い目)も多いということになり、ここに摩擦や肌への食い込みなどの問題が…。アソスはその点を問題視し、後に改善していくことになります。


自動車のフルモデルチェンジのように、おおよそ5年程度のタームで次世代に進化していくASSOSのビブショーツは、長い開発と改良の期間を経て次の物が生まれるので、新旧世代間に、どうしても技術的な差が生じる。とりわけ、素材と構造の進化が著しい。
わかりやすく言うと、生地は新世代になるほどに薄く、身体を覆う面積が少なくなり、より立体的になっていく。一方で、生地と生地を繋ぐ縫い目はどんどん減っている。ヌードに近づいているのだ。

ASSOSのビブショーツには価格帯の異なるグレードが存在し、どれを選べばいいか迷ってしまうが、まずはその時々の中堅グレードをお勧めしたい。中堅グレードは製品の核となる技術はきちんと盛り込まれつつも、普及の役割も担っている為、コストアップに繋がるギミックは排除されている。それがちょうどいい。

実際に着用してみた印象は、きつくもなく、緩くもなく。まるで第二の肌のように、身体に対してぴったりと生地が寄り添う。素材は機能性に優れ、汗を素早く処理することで、気温が高くなっても低くなっても、高強度で走ってものんびり走っても、暑いだとか寒いだとか、感じ方に差が生まれず一定である。
いろんな意味で「存在感が無い」ことがASSOSのビブショーツの特徴だと思う。主役はあくまでもライダー。ライダーの最大のパフォーマンスをどう引き出すかが、サイクルウェアにとって最も重要なことだとASSOSは考えている。

 

2013年ローンチのS7ジェネレーション。パターンをとことん追求した結果、製品の縫い目が一気に減りながらも、人間の身体のように立体的な製品になりました。わかりやすく言うと、収納する時にすごく畳みにくく、製品が起き上がってくるようになりました。たすき掛けのような印象のサスペンダーと背中のY字状構造により、肩の食い込み感が劇的に減り、着ていてとても楽になりました。この世代からショーツのカラーはブラックのみとなります。

 

「ゴールデンゲート」と呼ばれる、パッドの中央部分両脇をあえて縫い付けずに解放してしまうという大胆な構造は、このS7世代から。これにより、骨盤幅が狭く厚手のパッドに対して持て余し気味だった私アイハラは、 パッドのフィット感が大幅に向上しました。この構造は現行S9世代にもそのまま受け継がれています。


縁あって
ASSOSの専門店を始めて、まもなく10年が経とうとする。これまでに、いったいどのくらいの数のビブショーツを販売したかわからないが、色々あるASSOSのアイテムの中でも、お客様の満足度が特に高いものがビブショーツだ。購入いただいた方のほとんどが、その使い心地を褒めてくださり、またリピートしてくださる。売る立場として、このようなアイテムがあることはとても幸せだ。使えば、その良さをすぐに感じていただける。

よく「製品の裏側を見るとつくりの丁寧さがわかる」と言うが、まさにその通り。お店では、店頭での販売の際も通販での販売の際も、必ず製品を広げ、表も裏も確認し、汚れや破損、縫製不良、糸の始末が悪い箇所が無いかをチェックしている。しかし、ASSOSのビブショーツは、ほとんど手を入れる余地が無いほど、工場出荷時の状態が美しい。とても高い品質管理がなされている。この点は他社の追随を許さないだろう。

初めて見た時、「こう来たか〜!」と唸らされた最新S9世代のサスペンダーの構造。サスペンダーの付け根がよりパッドに近い位置になり、パッドの引き上げ効果が抜群。パッドとお尻の一体感が凄いです!そして遂に背中のパネルが無くなりました。これまで以上にショーツ部分の生地が薄くなったことも相まって、S9世代のビブショーツは涼しさが大幅に向上しています。

 

サスペンダー取り付け部分の構造に目を奪われがちですが、腰から下のショーツ部分(生地部分)の作りこそがS9のキモ!たとえサスペンダーを切り落としてしまってもまったく問題が無さそうなほど、ショーツのフィットが良くなっています。何かを着ていることを感じさせません。このようにディテールに目を向けてみると、アソスのビブショーツの変遷がよくお分りいただけたかと思います。次なるアソスのショーツの登場をどうぞお楽しみに!


一方で
ASSOSは、プロモーションやコマーシャルは、あまり上手ではないかもしれない。最近は、そういうことが得意なブランドが増えてきて、マーケットを賑わしている。サイクリングウェア市場の拡大とともに、国内外問わず、新規参入のブランドが増えて、見た目にお洒落なものがどんどん生み出されている。
そんな中、「ASSOSは相変わらずだなぁ」といった印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。でも僕は、ASSOSのそんな不器用な感じが、嫌いではない。あくまでも製品ありきのスタンス。

受け手がどこに価値を置くかで、選ぶものが変わるのだから、世の中にいろんなブランドがあっていいと思っている。ブレずに自分達が信じることを貫けばいいのだ。
僕が自転車に乗るのは、休日にリラックスしたい時が主だから、過剰に着飾って自転車に乗る必要はなく、着ていて気持ちがよく、機能性に優れ、シンプルで美しい物を使いたい。そんな思いに、ASSOSの製品はぴったりくる。
永遠のスタンダード。僕は自転車に乗り続ける限り、ASSOSのビブショーツを履き続けるだろう。

 



いや〜、アソスのショーツって本当に良いものですね!
ちなみに『アソスのビブショーツと私。』シリーズは今後も続くそうで、次回以降、業界の大物の方がアソスについて熱く語るそうですよ。お楽しみに!

最後に、冒頭でご紹介させていただいたダイアテックさんのサイト、最近また手が入っており、たいへん読み応えのある記事が多数掲載されています。実は私もここで結構勉強させてもらっています。皆様もぜひブックマークをして自転車生活に役立ててくださいね!

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